【デジタルヘルス事例】
健康寿命を延伸するデジタル技術の活用①

以前の記事で、デジタルヘルスとは「 デジタル技術を活用して健康寿命を延ばすことを目的とした、広義にはビジネスのコンセプト/概念であり、狭義にはサービスまたは製品」であると述べました。

→(前回)デジタルヘルスとは

ここでは、健康寿命を延ばすためにデジタル技術がどのように使われているのか、今後どのように進化を遂げていくのかについて、お話していきます。

まず最初に、健康状態を長く維持するためには

①  なるべく病気にならないように予防する
② 具合が悪くなったら、すぐに治療を開始する
③ (主治医が)最適な治療法を選択する
④ 治療中あるいは治療終了後、悪化/再発しないように気を付ける

この4つをしっかりやっていくことに尽きます。誰しもが分かっている当たり前のことですよね。

実はデジタル技術を使う目的は、この当たり前のことを より楽に 誰でもできるようにするためのものなのです。

それでは、①から④まで、順番に考えていきたいと思います。

①なるべく病気にならないように「予防」する

早寝早起きの規則正しい生活、腹八分の食生活、毎日1万歩以上は歩き、ストレスフリーの生活を送ることが健康にいいことは誰もが知っています。

ところが、知っていることとやれることは別ですよね。
毎日健康を意識して、色々な誘惑に負けず、自分を律しながら生活できる人は少ないのではないでしょうか?

デジタル技術は、(意識高い系ではない) 普通の人の「行動変容」を促すことに一役買います。

例えば、あなたに24時間365日張り付いて、全ての行動を記録するアシスタントが付いたとします。

そのアシスタントは、あなたの傍について、何時間寝た、何時間ゲームをやった、何カロリーの食事をとった、どれだけ運動した、何時間笑った、何時間怒られた、全ての行動をデータとして記録していきます。

そしてアシスタントはそれらを集計し、あなたに毎日レポートします。そのレポートには、あなたのデータだけでなく、あなたと同年代、あるいは同じ職業の人達との比較ランキングまでついています。

生活習慣の改善に努めるとその成果は全てデータに反映され、他の人達にも共有されます。場合によっては、今通院している病院の主治医や、健康保険組合、あるいは加入している生命保険会社にも共有され、みんなから賞賛を得て、うまくいくと毎月の保険料が少し安くなるかもしれません。このような成功体験を経験することで、もっと努力しようと好循環が生まれていきます。

残念ながらアシスタントを雇うと毎月何十万かかりますが、スマートフォンやウェアラブルデバイスされあれば、同じようなことができてしまう時代になってきたのです。

それでは実際の予防系サービスを紹介していきます。

運動管理

社会人になると、学生時代は引き締まっていた体も 1年1キロのペースで体重が増えて40歳が近づくころにはメタボ体形、そんな人はたくさんいます。でも忙しい社会人生活を続けながら、定期的な運動や食事制限を継続することは、終わりのないマラソンを走り続けるようでとても根気のいるものです。

そこでデジタル技術を使った様々な運動サポートサービスが提供されています。

FiNC
おしゃれに筋トレ ゴホービ
365日スクワット
Muscle Booster
仲間と一緒にダイエット Strava

デジタル技術を使うポイントは、 例えば、 目標体重を入れるとその人に適する運動トレーニングメニューを自動的に作成してくれたり、 歩くごとに溜まるポイントで健康食品モールでお買い物ができたり、一人では続かない人向けに仲間と一緒にやれるようにしたりと、様々な方法でモチベーションを維持してくれる点にあります。

運動不足が原因となって発症する疾患は、 糖尿病、肥満症、高脂血症、高血圧症 などがあり、これらが進行すると 心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患に発展するリスクが高まります。健康寿命の延伸にとって、定期的な運動は欠かせません。

食事・栄養管理

スマホのカメラでこれから食べるものをカシャっと撮るだけで、画像からカロリーや糖質や塩分を計算し、AIが色々な栄養バランスを考慮したアドバイスをしてくれるスマートフォンアプリが提供されています。

カロリーDiet
あすけん
カロリーママ
カロミス
CALORIE MAMA

単なるカロリー管理だけであれば、高度なデジタル技術を使う必要はありません。カロリーを気にするあまり、栄養不足気味になってしまっては本末転倒です。栄養不足になると貧血気味になったり、免疫力が落ちて風邪を引きやすくなってしまいます。

デジタル技術を使うポイントは、食事の写真を撮るだけで、バーチャルな栄養士さんが個別のアドバイスをしてくれる点です。簡単な操作で毎日の記録を美しく綺麗に残せる、友人にシェアできることも、継続するモチベーションも与えてくれるのでとても重要になります。

睡眠管理

良質な睡眠は、健康を維持する上で欠かせないものです。 米国のシンクタンク「ランド研究所」が2016年に発表したデータによると日本人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱え、国民の睡眠不足がもたらす経済的損失は約15兆円にも及ぶとしています。 こうした背景があり、入眠環境を整えたり、より良い眠りをサポートするスマートベッドなどのセンサーデバイスが提供されています。

lee BIZ
Sleep Number
HiBed
Dreem

2012年頃から、睡眠×テクノロジーに注目が集まりましたが、当時はFitbitなどのウェアラブルデバイスを使うことで、 自分が何時間眠ったのか、どの時間帯の眠りが深かったのか浅かったのか定量化するツールでした。ところがユーザーは、次第に単なる睡眠時間を可視化しただけのデータにはあまり価値がないことに気づいていきます。重要なのは、良質な睡眠になるようアシストしてくれることです。

最新のデジタル技術は、ベットやマットレスに様々なセンサーが内蔵され、寝ている間の姿勢に合わせて空気圧を細かく調節して体にかかる負担を最小限にしたり、いびきを検知してマットの片側を少し持ち上げるなどの機能を備えており、睡眠中の脳波や心拍数等のデータから、スムーズに眠りに入るための呼吸エクササイズが提案されるようになります。

 

 

 

予防まとめ

予防サポートは、現時点ではまだまだ発展途上で、これからどんどん進化していく分野です。

今はスマートフォンやウェアラブルデバイスに運動・食事・睡眠などの生活ログが自動的に収集され、それらを元にアドバイスしたり、仲間とシェアすることで、モチベーションを維持していくサービスですが、まだ個人レベルの取り組みに留まっていますよね。

今後はこれらのサービスが「社会実装」され、このようなサービスを受けることが当たり前になってくることが考えられます。具体的には、企業や健康組合が社員向けの福利厚生として大規模に展開する、または生命保険会社が保険料金とダイナミックに連動する、などなどです。

また、睡眠の事例であったように、あらゆる家具や家電、または洋服や靴にセンサーが組み込まれることで、もっと自然に正確な細かいデータが収集されることで、私たちにとっては専属のトレーナーが常時張り付いて、私たちにとってベストなやり方で生活上の予防方法を教えてくれることになります。

 

 

今回はここまでです。次回は「 ② 具合が悪くなったら、すぐに治療を開始する 」について説明していきます。